『エサを与えないでください』

高校生×高校生のあまずっぱい短編集

 悪戯心というのは誰にでもあるモノだと思うのですヨ。でも僕の場合、ちょっとその使い方を間違えたというか。相手を間違えたというか。
 一時間前――
 自他ともに認める野球部の敏腕マネージャーの僕は、部長の黒柳さんのサインをもらうべく、書類を持って疾走していました。伊達に黒柳さんと付き合ってるわけじゃないし、きっといるだろうな~とある程度の確信を持って、中庭に行ったわけです。でもまさか、黒柳さんがあんなことをしているとは思わなかったのですヨ。  

 だからある意味では、黒柳さんにも責任があるのです。だって人間は、意外性とかギャップに激弱な生き物なのですから!

 黒柳さんは僕の一個上の先輩で、野球部の部長で、キャッチャーで、動物に例えると、うーん……ゴリラ? 後ろ姿はでっかくて、四角くて、かっこよくて、頼りがいがあって……そんな黒柳さんに、僕はいつもこっぴどく叱られてばかりでした。

 でも、夏の地区予選の決勝でチームが惜敗した時、悔しくて悔しくて涙の止まらない僕を、黒柳さんはそっと抱きしめてくれたのです。

 そして、自分も涙を堪えているくせに、優しく言ってくれました。お前はよくやった――って。

 その時に、気づいたんです。ああ、僕は黒柳さんに認めてもらいたくて、頑張ってたんだなあ……って。

『エサを与えないでください』より


 プラトニックな関係のまま両思い歴3年目に突入してしまったふたりのワチャワチャ、星にしか興味のない天文部員に恋する純情少年、絶賛片思い中の彼の王子様役を演じることになって!?

……などなど、「あまずっぱい」をテーマに描いた高校生(っぽい)BL短編集です。表題作『エサを与えないでください』の他、全9編をまとめました。

●表紙/晶之助 ●発行日/2022年9月6日 ●文字数/約31,000 ●399円(読み放題/Unlimited対象)


◆紙の本には書き下ろしの後日譚を収録

●A5サイズ(全66ページ) ●400円

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