2023.01.11 15:00『手出し無用!』百戦錬磨なヤンキー先輩×健気なアホの子の〝手出し無用!〟な純愛BL 山本珠莉の人生は、薔薇色だ。 青い空、白い雲。 子どもがクレヨンで塗りつぶしたような水色が、今日も良い一日になると教えてくれる。深呼吸すると、若葉の息吹に満ちた爽やかな空気で肺がいっぱいに膨らんだ。 両手を突き上げて伸びをすると、制服がガサゴソと音を立てた。学ランは窮屈だしすでに暑苦しくもあるけれど、あと一週間もすれば衣替えだ。やがて訪れる梅雨を乗り越えれば、いよいよ本格的な夏がやって来る。 七夕、プール開き、花火大会、盆踊り、キャンプ、肝試し、川遊び、昆虫採集、スイカ割り、かき氷、流しそうめん、ビールと枝豆……は、まだ早いか。 八月最後の週には、陸上部の夏合宿だってある。砂浜でひたす...
2022.09.27 15:00『年下αの劣情(オメガバース)』【年下α×年上Ω】ばかりを集めたオメガバース短編集 円らな瞳。 ムチムチの腕。 モチモチのほっぺ。 こぼれ落ちる涎で潤った唇。 耳が溶けてしまいそうなほど甘い音色で紡ぎ出される喃語。 生まれたての蕾が花開くように咲き誇る笑顔。 まさに、「かわいい……!」 の、宝庫だ。 「今、何ヶ月でしたっけ?」「四ヶ月」「もうそんななんだー、早いね」「目元がそっくり!」 もちろん赤ん坊は可愛いし、それを取り囲む女子たち――と、時々、男子――も、ものすごく可愛い。 だが、可愛いのベクトルが人とは違う方向を向いている尊文は、そんな彼らよりももっと……ずっと……なんなら、世界一可愛い存在を知っていた。「土橋課長」 眉間に皺を寄せたまま、土橋は目線を持ち上げた。直前までパソコ...
2022.09.19 15:00『二階堂会長の特別授業♡』文武両道の生徒会長×帰国子女の一年生 ものすごく不快なことをされているのに、二階堂の広い背中は日和に不思議な安心感を与えてくる。頭の奥の方では、制服に皺をつけちゃいけない、と思うのに、日和は二階堂のブレザーにしがみついた手を解けなかった。「気持ちいいとこ、探そうな?」 慈しむような瞳で覗き込まれ、日和は息を呑んだ。なぜだろう。決して強要されているわけではないのに、二階堂の言葉には逆らうことができない。 こくん。 日和が小さく頷いた瞬間、二階堂の中指がズブリと日和の後孔を抉った。『二階堂会長の特別授業♡』より
2022.09.09 15:00『一年目と二年目のBL短編集』2019年と2020年に生まれた短編の詰め合わせ 金曜日の夜十時。雨でも晴れ曇りでも、俺は毎週そこに行く。『レッツCocoでウォッシュ!』 半年前にオープンしたコインランドリー。ふざけた店名だが最新型の除菌機能付き乾燥機が完備されているのと、自宅から徒歩三分という贅沢すぎる立地条件に絆され、俺はすぐに常連客になった。周辺に単身用のアパートが多いこともあり、雨の日には順番待ちになることもある。だがふいの小春日和となった今日、動いているのは一台だけだった。 そしてそこに、彼はいた。『見惚れる背中』より 新原明久は〝偽善者〟だ。 男だとわかっていて彼を好きになってしまった俺を哀れんでいる。本当は気持ち悪くてしょうがないくせに、必死に俺の気持ちを受け入れようと...
2022.09.05 15:00『エサを与えないでください』高校生×高校生のあまずっぱい短編集 悪戯心というのは誰にでもあるモノだと思うのですヨ。でも僕の場合、ちょっとその使い方を間違えたというか。相手を間違えたというか。 一時間前―― 自他ともに認める野球部の敏腕マネージャーの僕は、部長の黒柳さんのサインをもらうべく、書類を持って疾走していました。伊達に黒柳さんと付き合ってるわけじゃないし、きっといるだろうな~とある程度の確信を持って、中庭に行ったわけです。でもまさか、黒柳さんがあんなことをしているとは思わなかったのですヨ。 だからある意味では、黒柳さんにも責任があるのです。だって人間は、意外性とかギャップに激弱な生き物なのですから! 黒柳さんは僕の一個上の先輩で、野球部の部長で、キャッチャーで、動物に例...