『アルパカ国王とオメガ少年の青い空(獣人オメガバース)』

アルパカ獣人(α)×人間の少年(Ω)

 蹄が乾いた砂を踏みしめる音がする。
 数日前から降り続いていた雨が、昨夜ようやく止んだ。喜び勇んで輝く太陽が濡れた地面の水分を奪い、色濃かった砂浜はあっという間に真っ白になった。その上を、一頭のアルパカが悠然と歩いている。
 キャラメル色の毛を撫でながら、乾いた風が通り過ぎていく。味わうように、アルルンは目を細めた。

「いい天気だ」

「風が気持ちいいですね」

「ああ、絶好の散歩日和だ」

 アルルンの足元で、ジャンガリアンハムスターのジャンが答えた。それに続いたのが、スズメのスザク。共にアルルンの右腕と左腕を務める側近だ。

 ライオンが百獣の王と呼ばれ、獣界に君臨していたのは、もう遠い昔の話。今、このヒュントヒェン島に王として君臨し、そこに住まう民を治めているのは、アルパカのアルルンだった。

 ヒュントヒェン島は、小さいが豊かな島だ。周りを囲む海にはありとあらゆる海洋生物が生息し、島の土壌は豊富な栄養素を含んでいる。

 民たちは朝日と共に起き出し、漁に繰り出し、畑を耕し、自然の恵みを堪能し、日没と共に眠りにつく。決して贅沢ではないが、穏やかで尊い――そんな毎日を、慎ましやかに送っていた。

『アルパカ国王とオメガ少年の青い空』より


 アルパカ獣人(α)×人間の少年(Ω)の獣人オメガバースBL。

 ある日、獣人の島『ヒュントヒェン島』に、ひとりの少年が流れ着いた。「オメガ」と名乗った少年は、身も心もひどく傷付いていた。国王として民を治めるアルパカ獣人のアルルンは、彼の青い瞳に強く惹かれる。

 穏やかな空気に包まれ、優しい獣人たちと触れ合い、少しずつ心を開いていく少年。だが、平穏な日々は長くは続かなかった。

 オメガの身体に隠された驚きの秘密が明らかになり、やがてそれは、アルルンの本能の覚醒へと繋がっていく。

●発行日/2022年9月20日 ●文字数/約21,000 ●299円(読み放題/Unlimited対象)

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