2023.08.30 15:00『夏に恋した金魚』金魚すくい屋台の青年×失恋した大学生の夏祭りBL 向かい合わせに立ち並ぶ屋台の間を、こっちからとあっちから、人の波がぞろぞろと動いている。暗くなるまでは縦横無尽だった人の行き来にいつの間にか右側通行の暗黙の了解ができ上がっていて、気がつくと、一気に膨れ上がった群衆の中にすっぽりはまり込んでいた。方向転換するには、タイミングを見計らって突っ込んでいくしかない。 流れに身を任せたままどうしたものかと考えあぐねていたら、ふいに視界の斜め前方に人ひとり分の空間が見えた。意を決して身をひるがえし、できるだけ誰の足も踏まないよう隙間と隙間を渡り歩きながら、屋台列の終点を目指す。そうして目的地に到達すると、僕はほうっと息を吐いた。 八月もあっという間に最後の週末を迎...